『夜明けの街で』 東野圭吾


『夜明けの街で』 東野圭吾 角川文庫 660円

東野圭吾の作品はハズレ無しと言われています。『夜明けの街で』が文庫化され早速読んでみましたが、文句なしに楽しませてくれました。あれこれ難しいことを考えずに夢中で、まるで映画を見るように読書を楽しみたいのであれば東野圭吾の作品を選んでおけば間違いないでしょう。

この作品は40手前の妻子持ち建築会社社員渡部と31歳派遣社員秋葉との不倫を主軸にした話です。主人公の渡部の独白調で話は展開するので、ずぶずぶと不倫にはまって行く様がありありと分かります。男として理解できる部分もありますが、理解できない部分も大いにあります。女性が読まれると怒りすら感じる方もいらっしゃるかもしれません。私情を挟まずに鳥瞰的に人様の不倫の様を楽しむと割り切って読めば、この二人は今後どうなるのだろうかと、大いに楽しめます。

不倫を主軸として同時に時効直前を迎えた事件も絡んでくるので、もう目が離せません。Aという充分効き目のあるスパイスに更に効果があるBというスパイスを加える、エンタテインメント小説の真骨頂がここにあるといった感じです。電車の中でも駅でも夢中で読んでしまいました。時効を迎えた事件の真相は?そして不倫の恋の行方は?ラストの2ページには戦慄を覚えました。この部分のみ二度読みしてしまいました。