新しい旅の形が見えてくる 中村安希『インパラの朝』
しばらく品切れしておりました中村安希『インパラの朝』が再入荷いたしました。
第7回開高健ノンフィクション賞受賞作品といことで発売当初から話題にはなっていたんですが、その後も各方面での話題が尽きないのはやはり素晴らしい本だからではないでしょうか。
47カ国、2年に及ぶ旅の記録です。バックパックスタイルの旅のバイブルと言えば沢木耕太郎『深夜特急』です。その『深夜特急』でもなく、面白可笑しく読める旅エッセーでもなく全く新しい旅の形が見えてくるのが本書です。
著者の中村安希さんが英語が喋れるということも大きいのでしょうが、現地に深く入り込みそこからあぶり出される国家の矛盾や人とのふれあいの素晴らしさが、小説のように書かれた文体から心にしみ込むように伝わってきます。また、深入りせず、感情的にならず、クールに現実を見ているところもいいです。
旅は結構壮絶な旅をしています。表紙のポートレイトが気になっていましたが読み進めるうちに中村安希という人物像が浮かび上がってきて、ポートレイトを何度も見ながら読んでしまいました。