桐野夏生『東京島』 極限下で現れる深層心理
桐野夏生『東京島』 580円
夢中になって二晩で読んでしまいました。
映画化を控え、今週頭から売れ出しています。
無人島に流れ着いた32人中、女はただ1人。清子は唯一の女として女王のごとく島に君臨する。でも、極限状態におかれた人々の精神は徐々に崩壊していき、悲劇をも生む。5年、10年と島で暮らすうちにそこはユートピアになりうるのか?
極限状態の人間を描いた作品なのでいささかグロテクスな部分もありますが、人の深層心理は見事に描かれています。日常ではありえない設定での人間ドラマを楽しめるのがここにはあると、あらためて小説の楽しさの醍醐味を教えてくれます。
清子のその後、島の人々のその後。ラストは賛否あるかと思いますが、人間の心理のベクトルがそれぞれの方向に向かった結果なので納得の終わり方だと思います。